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正面を見れば見覚えのあるカバン。
いや、見覚えも何も
「私のカバン!」
私の目線の高さで宙に浮かぶカバンに飛び付こうとした瞬間カバンはひょいっと更に浮かび上がった。
見上げる程高い位置に浮かぶカバンの下から顔を覗かせたのは
「あ…」
私のカバンを不機嫌そうに持ち上げる
一ノ瀬さんがそこに居た。
「あ…はは…おはようございます…そうですよね~一ノ瀬さんしか持って帰れる方いないですよね~ありがとうございます~」
口早にお礼を言いカバンをキャッチさせようと両手を挙げた。
…と、視界の端に女性社員がこっちを見ながら何か話しているのが見える。
(ん?何だろう…?)
其の様子を一ノ瀬さんは静かに睨みつけ、短い舌打ちを鳴らした。
「……ちょっと来い!夕嶌!」
一ノ瀬さんはカバンへと掲げていた私の手首を其のまま掴み歩きだす。
「えぇ―――?」
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