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押し入れから大きな 鞄を適当に取り出して とりあえ着そうな服を 詰め込む。 「っ、ふぅ・・っ」 なんとも言えない気持ち になって、でも胸が 苦しくて苦しくてなにも 考えずにただ走り出した。 こんな僕を必要として くれる人なんている んだろうか。 「・・、はあ、はあ…っ」 走って走って走り続けて たどり着いた場所は 涼介の家だった。 「なんで…っ!」 ここに来ちゃったんだろう どうして、涼介の家に…っ 僕は涼介に逢いたいの? 自分から別れたくせに そんな都合のいいこと…っ 「…、誰?」 突然後ろから聞こえた 聞き慣れた声。 パっと振り返ると 驚いて目を丸くした 涼介が僕を見ていた。 「りょ、すけ・・っ」 学校のはずなのに、 なんで…っ 「…どうした?」 「あ、いや・・っ 忘れ物しちゃって」 「そ、っか…」 小さな声でそう答えた 涼介は扉の前に立ち ゆっくり鍵を開けた。 その背中に抱き着きたく なるのをグっと堪えて 扉が開かれるのを待った。
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