夏まであと少し

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「一瀬君は実家帰るの?」 夏休みまであと1ヶ月。 大学に入っての初めての長期休み。 周りは「実家」という言葉を使うことになにか違う憧れを込めて言っているような気がした。 「帰りたいけどなぁ…。」 手帳を開けばバイトと実習で埋まっていて2ヶ月の休みは4分の1くらいだろう。 ゴールデンウィークには帰ったけど、夏休みはきついかもしれない。 話しかけてきた白河菜奈は冷房が効きすぎているからか、紺のカーディガンを羽織っている。 それが、周りの男子学生がツボなのか、「白河さん。」と何度も話しかけられていた。 清楚な顔立ちの白河菜奈に思わず見とれていると、結衣のあどけない笑顔が頭に浮かんだ。 「帰らないの?」 「実習がな…。」 実習とバイトさえなければすぐに帰るのだけど。 「そうだよね…なんで理系なんかに入っちゃったんだろ。」 白河はそうは言うものの、たいして後悔はしていない。 ほほを緩めているのだからそうだろう。
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