ゆきやなぎ

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「俺はそういう意味で捉えたその文句を座右の銘にしてます。」 「鑑のような男だね。お前、伸びるよ。」 「藤堂さんに褒められると嫌な予感しかしねぇ。」 「その失礼な予感、適中させてあげるよ。今日の晩御飯は卵とじがいいな。」 卵とじ?! 晋太郎が聞き返したときには藤堂はにんまり笑ってその姿をくらませようと早足に立ち去っていた。 「……結局薪割りは俺が全部やんのかよ。」 久々の休暇だったのに、しかも今日の飯番は俺じゃないのに! なんて、たった今偉そうなことを言った手前言える訳がない。 ―…うまく嵌められた気がしなくもない。 でも、藤堂の自分に対す評価が嬉しかったのもまた事実だ。 晋太郎はこそばゆさに笑みをもらした。 それから数日後、ひいが甘いものが食べたいと言うので買いに行くのに付き合ってやった間に騒動が起きた。 騒動、といってもある程度日常茶飯事だ。 私闘を禁ずると法度にあったとしても、よほどのことではない小競り合い程度ではお咎めがない時すらある。 細かい喧嘩を糾せばきりがないのだ。 それだけ血の気が多い集団だった。 成り上がりたいという野心がある限り穏やかな性格にはなりえない。 そんな連中が多かったのだ。 ただ、刄傷沙汰ともなれば勿論法度の通りであったが、そんなことは滅多にない。 だから頓所に帰って騒動があったと聞いても晋太郎は大した感想を抱かなかった。 また雑魚共がお互いのプライドを傷つけあって一暴れしたのだろう。 「ひい、怪我人がでてたら、菓子を食うのをやめてまず診てやるんだぞ。」 「えー?だって食べかけだよう。嫌だよう。」 「駄々をこねるな。」
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