ゆきやなぎ

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「駄々じゃないもん。」 「駄々以外の何物でもねぇんだよ。」 「意地悪!土方さんに言ってやる~。」 「はっ。土方さんがお前の戯れ事なんかまともに聞くかよ。みんな忙しいんだから手間かけさせんな。」 二人が睨み合っていると、カラカラっと医術所の戸があいた。 そら来た、と言わんと開いた口はあんぐりと間抜けな形をつくる。 ひいが別段変わらぬ様子で一生懸命餅を頬張っている横で晋太郎はバッと立ち上がった。 「藤堂さん?!」 まさか喧嘩の張本人が藤堂だと晋太郎はひとつも思わなかったのだ。 いや、勘違いかもしれない。 一瞬でも払拭したい考えは、藤堂の表情を見れば一目瞭然だった。 凍りついた頬、爛々と明るい色で燃える瞳は一目で怒っているということがわかる。 「平助、とりあえず中に入るぞ。」 静かな無表情で怒るそのあまりの瞳の強さに晋太郎は藤堂の横に永倉が付き添って立っているのに気づかなかった。 あやすように優しい言い方で、永倉が藤堂に医術所に入るよう促す。 晋太郎は慌てて座布団を用意すると、二人が座って口を開くのを恐ろしく思いながら待った。 「木刀が肩に入ったんだ。一応診てほしい。」 永倉が言いにくさを感じさせずに言う。 「一体どうしたんです。」 晋太郎は我慢がならなくなって問い掛けた。 「稽古ですか?」 「稽古っちゃあ稽古だけど……。」 歯切れ悪く永倉が濁す。 その横で、藤堂がいつか見たような厳しい表情で視線を伏せた。
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