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「本人から聞きてぇだろ。」
「でもあの感じだと話してくれないよ、きっと。」
「お前が何で知った風な口きくんじゃ。」
「藤堂さんは、すごく頭が良くて、簡単に人を支配する方法を知っているよ。なのに喧嘩なんかして、それって絶対普通じゃないもん。」
確かにそうだ。
いつも自分は簡単に丸め込まれて手を出す気にもなれない。
相手が手を出したとしても、それに対してあんなに怒る藤堂じゃない。
にやりと笑って、そいつを更にどん底におとしめる。
抜け出せない蟻地獄のような、藤堂の手の平。
「…何に怒ってたんだ?」
腹が痛いのも忘れて晋太郎は顎に手をあてる。
「何かされたか言われたんじゃないかなぁ。」
「ふん、それなら自分から言いやしねぇな。」
それこそ藤堂の弱点、さわられたくない部分だ。
自ら弱さを露呈するようなことはしないだろう。
「年のことを言った時ほど余裕がねぇことって、何なんだ?」
「晋ちゃんは藤堂さんのこと好きだねえ。」
独り言ちて思案にふけろうとした晋太郎の眉間が寄る。
のんびり豆大福を頬張るひいに向き直ってしっかりと否定した。
「違え。」
「晋ちゃん、お茶飲みたいよう!」
ピーピーピーピー、どこの巣の小鳥だ。
お茶を与えなければ口は塞がらないだろう、晋太郎はダンっと足音をたてて立ち上がると、「すげぇ渋くしちゃる。」と可愛い捨て台詞を残して台所へ向かった。
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