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しかし正妻の子でないとなれば、名家の中での扱いはひどい。
落胤、きっと虐げられてきたのだろう。
だが、それ相応の教育や育ちはしてきたのだ。
あの教育された知識と論理的な思考力の由縁はそこにあったんだと気づけば、いやにしっくりくる。
「藤堂さんが、伊勢大殿様の御落胤…。」
「俺も詳しくは知らないんだ。ただ、平助がそれをいいことに思ってなくて、武家社会でも身分が高ければ高いほどよくあることなのに、その分だけ蔑視されるから……。」
俺らみたいなのにはわかんないことだけど、と沖田は視線を伏せる。
「"あの藤堂家の妾の子"、は…言葉以上に傷つくんだ。」
どこから知ったのかしらないが、彼らはそう聞こえよがしに笑ったらしい。
沖田とてその場にいた訳ではないからわからない。
一緒に稽古場にいた永倉が何とか場をおさめたという。
そう沖田は風に聞いたものだから、てっきり二人をボコボコにしたのかと思ったのだ。
「平助は永倉さんが一緒にいるから大丈夫だろうけど……でもこの騒ぎ、土方さんの耳に入ったらまずいよ。いくら平助が手をだしてないとはいえ、幹部が喧嘩したなんて聞いたら。」
ふっと沖田が今度は違う心配に顔色を変える。
土方が定めた規律は、既に多くの隊士らを切腹に帰した。
それは前副長の新見錦とて例外ではなかったことだ。
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