ゆきやなぎ

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「大丈夫なんじゃないですか?土方さん、藤堂さんとは昔からの知り合いなんですし。」 「だといいんだけど…。」 沖田が唇を尖らせて俯く。 ヤカンの煙はすっかり薄く頼りなく立ち上る。 焚きなおしをする気分にもなれなくて、晋太郎はそのまま急須に湯を注いだ。 案の定ひいにはぬるいと文句を言われたが、そんなことはどうでもよかったし、言い返す気にもならなかった。 それほど、先の沖田の話が頭の中でぐったりとした存在感を呈していた。 あの全てにおける自信は、どこから生まれたのだろう。 かねてからのその疑問は、まるで雪が溶けるようにしゅうしゅうと消えていった。 消えたあとに残るのは胸につかえる異物のような感情で、ぬるい茶をいくら飲み干しても流れてはいかなかった。 ―…藤堂さんは、どこにいるのだろう。 永倉が付き添って、自室で待機だろうか。 ならば同室である沖田が病み上がりを押してバタバタ探し回るはずはない。 永倉の部屋だろうか。 ―…だが、自分が会いに行ったところで。 大したこともできまい。 ただ座って事態が片付くのを待つのか。 片付いたあと、何でもない顔をして何も知らないふりをして、「災難だったな」なんて笑ってやるのか。 ―…違う気がする。 「晋ちゃん、あとで薬屋さんに行かなきゃならないんだけど、ついてきてくれる?」 ひいがポンっと言った。 晋太郎はまるで弾かれたように首を横にふる。 その言葉を待っていたかのような自分に驚きつつ、晋太郎は立ち上がった。 「悪ィ、俺私用がある。山崎さんを頼ってくれ。」 目の端にひいの満面の笑みが見えた。
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