ゆきやなぎ

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土方さんの顔が、憐憫の色に染まる。 哀れんで欲しくなんかない。 そんな視線は昔から見慣れてるはずなのに。 あいつらの、あの馬鹿にしたような、卑しいものをみるような目だって。 ―…わたしのせいで、ごめんね。 突き刺すような硝子の音が、深い意識で砕ける。 真っ暗な夢の中でいつも聞く声。 何で謝るのさ。 「…平助は詰め寄っただけで手も口もださなかった。まあ、ものすごい迫力ではあったけど。」 新八が襖の近くで淡々と、最後はやや感情をこめて息をつきながら言った。 「それが彼等を怯えさせた結果、亀太郎のずぶの素人さまさまの一降りで平助が打撲したんだけどね。土方さん、俺は平助は悪くないと思いますよ。」 「悪い悪くないの話をしてんじゃねぇ。落ち度があったって言ってんだ。」 土方さんは言葉遊びをしている訳じゃない。 落ち度、か。 いやに増幅した矜持のせいか、真っ直ぐ土方さんの真っ黒な瞳の中を貫くように視線が伸びる。 落ち度なんて、俺が生まれたこと自体だれかの落ち度だ。 存在自体落ち度なんだよ俺は。 そんなのを生まれてからずっと真正面から真正直に見つめざるをえなかった人間が、どうしたら自分を見失わずに、自分に価値があるはずだということを疑わずに生きていけるんだ? だから俺はそんなそぶりだけは見せたくないんだよ。
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