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睨みあげるようにして土方さんの言葉を待つ。
処分だなんだは聞き飽きたし見飽きてる。
容易につく想像が、恐いだなんて思わない。
「平助の落ち度って何ですか。」
新八がむっとしたように、僅かばかり土方さんにくってかかる。
新八は普段のほほんとしている割に隠した信念は人一倍まっすぐだ。
理不尽は嫌いで、でもあまり表にださないだけ。
土方さんもそれを知っているから、いくらか面倒くさそうに眉をひそめた。
だがすっと無機質な瞳をすると、鋭い語気で言った。
「ずぶの素人さまさまの剣を、何故わざわざうけた。」
新八がぎょっとして視線をこちらに向けるのがわかった。
「避けなかったのは何故だ?お前の落ち度は、挑発にキレたことでも挑発させるようなことをしたことでもねぇ。怪我をしたことだろうが。」
予想の斜めに向いた土方さんの不機嫌に、新八も目を丸める。
土方さんの言いたいことが、じわじわと染みてくる。
余計癪に障る。
俺のことを案じてるのかよ。
深く入ってくるなよ。
「…怪我したからって、何が悪いのさ。いつ死ぬかわかんないんだ、そんなこと恐れててどうするんだよ。」
「違う!」
一喝が冷たい空気を震わせる。
いつも着膨れた土方さんが、今は着流し一枚ですっとしているのがふと目についた。
何で真剣に向きあおうとするんだよ。
適当に喧嘩両成敗って手をひらひら振りながら言うだけでいいじゃないか。
今更俺の何が違うっていうのさ。
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