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縁側に座って足をぷらぷらさせて彼らの様子を眺めていた藤堂にぴしりと言い放たれる。
「どうして晋太は完璧にはいかないんだろうね。」
「大丈夫ですか、晋太郎先生。」
「葉っぱが目に入った。」
「水で洗ってきなよ。充血したら見づらいし。」
「そんなに悪くはないから平気だ。」
晋太郎はぐっと目をつむると、滲む涙を腕で拭った。
「じゃあ早く終わらせて。稽古やりたいんだよね。」
藤堂がふぅと息をつく。
半刻前に晋太郎を探して縁側に座りついてからずっとつまらなさそうにしている。
無論、見ているだけだ。
手伝う気は全くないらしい。
早く終わらせて稽古に付き合ってほしいのなら、手伝え。
喉元まででかかった言葉を飲み込むのはもう慣れた晋太郎である。
新撰組に加入してから早四ヶ月。
その間にわかったことといえば、何かと晋太晋太と用を足したがる藤堂の天性たる強引さ。
傲慢、とまでいかないが、かなりやりたい放題生きている。
人に仕事を押し付けるのがうまいし、自分の壺にはめるのを自然にやってくる。
自信家で精神的に余裕があるから人の目をひく。
だから余計にやりたい放題できるのだ。
理由を考えるよりも実際対面したらわかるその存在感の強さは、まさに天性たるもの、なのだ。
憎たらしいが嫌悪は抱かない。
不思議な奴だと晋太郎は息をついた。
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