はくぼたん(途中まで)

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5つも年上の相手と稽古や試合をするのは慣れていたけど、土方さん相手では訳が違った。 なんとなく萎縮してしまう。 目を見ないように、と思わず視線は下向きになってしまった。 土方さんの見よう見真似の構えは、天然理心流のそれと同じで、足運びなんかを見ると、さすが稽古をずっと見ていただけあるな、と思った。 でも見ていただけではここまで形にはならない。 隠れてどこかで練習していたのだろうか。 でもそれなら何故隠れる必要があったのだろう。 稽古中にそんなことを考えるのは俺にはまだ早くて、ふとした隙に土方さんに間合いを一歩踏み込まれてしまった。 威勢よく上段からくる木刀を、まともに受けては力負けだ。 その直感は反射に等しく、また土方さんの素直な軌跡はひねくれ同士のそれなんかより随分優しくて。 次に間合いを詰めたときは、いつもより鮮やかに、俺は勝っていた。
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