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「寒くないんか、平助。」
「寒いに決まってる。だからってそんな格好はしないだけで。晋太、ちょっと頼み事があるんだけど。」
でた。
ちょっと頼み事がちょっとだった試しはない。
露骨に嫌な顔をすると藤堂は更に顔をしかめてみせた。
「晋太は総司がぶっ倒れてもいいんだ。」
「沖田さんならもうぶっ倒れてるが。」
「晋ちゃんそういう言い方よしてよう!」
「なんだよ、元はこいつが…」
「御託はいい、薪割り手伝ってくんない。非番でしょ。」
「平ちゃんよー、薪割りなら新入りの仕事だろー。亀とか十がいるだろ?晋太は飯番もあるし、いいんじゃね?やらせなくても。」
原田が真っ当なことを間抜けな様で言ってくれる。
晋太郎はがくがく頷く。
できるからって何でもかんでも便利屋扱いするな。
だが藤堂が珍しく苦い顔をするので怪訝に見つめ返す。
「……あいつら本当使えないんだよ。」
「あー…確かに。聞かないんだよなー先輩の言うこと。」
「無駄にプライドばっか高くてさ、だから晋太、頼むよ。」
「わかりましたよ。」
結局断れないのが晋太郎だ。
「プライドってなに?」「自尊心とか矜持とか、そんなものです。」という会話を背中に受けながら、晋太郎は藤堂の後を歩いた。
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