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ーートントントントン。
どこからか包丁の音が聞こえる。音だけでその不器用さがうかがえる。
相変わらず重たい瞼は開かないが、不安そうな包丁の音は俺の心をどぎまぎさせる。危なっかしい。非常に。
うっすら目を開けると長い黒髪を頭の上で縛った女性が台所で料理をしていた。
「……ん、んん」
アクビをしながら起き上がる。なんだか頭が重い。長い夢を見ていた気がする。高校時代のことだったかな。…………思い出せない。まあ、いいか。
「おい……」
俺は台所で料理をしている女性に声をかけた。
「あ、駿ちゃん。起きた」
なつみは包丁を持ったまま、振り向いた。
「なんでいるんだよ?」
「朝ごはん作ってたんだよー」
なつみは包丁を振り回しながら答えた。すごーく、危ない。
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