約束

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なつみは少し遠くを見つめながらこう言った。 「こうして私の料理する音で駿ちゃんが起きて、一緒に朝ごはん食べて、行ってきますのチューして……。そういう普通のお嫁さんになるのが夢だったの。でも大学生になって夢の半分は叶ったよ」 俺は高校1年の夏になつみと付き合ったと同時に進路を決めた。なつみと一緒の大学に行くことを。 それはもう、容易な事ではなかった。なつみは都内の国立1本だった。到底、俺の学力では入れないほどの大学だったが、休みの日はほとんどなつみと一緒に猛勉強をした。幸い1年の夏から始めたことによってギリギリだが受験出来るほどの学力はついた。 今でも合格したのは奇跡だと思っている。あの時は泣くほど嬉しかった。 無事大学生なった俺は今はこうして一人暮らしすることになったのだが…………。 「だって隣に住んでいるんだもんねー」 そう。なつみの部屋は隣なのだ。親が女の子の一人暮らしは危ないからといって隣同士に住むことになったのだ。 けど絶対それには俺となつみの母親同士の陰謀があったに違いない。 「早くしないと遅刻するよ。やっぱ大学は初日が大事だよ。シャキッとしてよね」 なつみはまたしても包丁を振り回した。今度はかるく当たりそうになった。
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