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「なつみの部屋ちゃんと鍵閉めたか?」
「あー、忘れてた! 危ない危ない」
女の子の一人暮らしは危険というよりは、なつみの一人暮らしは危険
ということだったんじゃないか。
なつみと並んで最寄りの駅へと向かった。もうすぐ駅に着くというどこで、ふとあることに気づいた。
「あれ、なつみ鞄は?」
「あはは……駿ちゃんの家。早く言ってよねー」
「…………」
途中まで気づかなかった俺が悪いのか……。
「朝ごはん食べるために早く出てよかったね。早く戻ろー、駿ちゃん! 鞄取りに」
「しゃーねーな!」
「手をつないでいこー」
「えー、やだよ」
「嬉しいくせに」
無理矢理手を握らせられると、ブンブン振り回しながら、鼻歌まじりで自宅への帰路を歩いた。
春の日差しはほどよく暖かく、まるで俺達2人を優しく包みこむような心地よさがあった。
俺の隣には天真爛漫な少女。この町に新しい風を運び、小さくそれでも決して枯れることのない1輪の花を咲かせるだろう。
相変わらずなつみには振り回される日々は続いた。なつみのこのおっちょこちょいの性格はなおりそうにない。
いつか思い返す時に、笑って話せるように。未来のなつみはしっかりものになっていると信じて。
「なつみ」
「なあに?」
「結婚しような」
「当たり前じゃん! だって私は駿ちゃんのこと大大だーい好きだもん! もう、これは結婚するしかないでしょー」
「ははは。言うまでもなかったってことか」
「そういうこと! 決定事項なのです」
そして5年後。
祝福の鐘が鳴り響く教会の中で俺達は永遠の愛を誓った。
(完)
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