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ある世界の、と在る場所。
そこには数々の裏切りを経験し、人間の汚く醜い部分を見続け酷い仕打ちを受けてきた人間嫌いの、少女がいました。
彼女は思いました。
どうせ裏切られるなら信じなければいい。
親も友人も恋人も。
心の闇をある程度は話しても基本は表面的な上辺だけの付き合い。
その方が楽でいい。
そう。
少女はそう思い込む事こそが自分が一番傷つかない最善の方法だと考えたのです。
上辺だけの良好な関係。
それでいいならば誰からも信用され愛される人間であればいい。
だったら。
―――笑え。
わらえ、笑え、わらえ。
悲しくても、苦しくても。
辛くても、泣きたくても。
「――――笑って『私』」
そう言い自分に聞かせるうちに、いつしか少女は楽しくもないのに笑えるようになりました。
少女は知っていました。
相手が望む言葉。
相手が望む行動。
時に泣き、時に怒り。
時に笑い、時に苦しむ。
彼女のそれは。
総てが総てではなくとも打算や、計算によって作り出されたものでしかありませんでした。
そのお陰で少女の周囲には少女を信用し便りにする人が絶えませんでしたが少女自身は孤独でした。
裏打ちされた打算も演技も。
苦痛でも辛くても皆に合わせる、耐久力や気力も。
彼女にとっては心労や疲労が溜まるばかりで既に我慢できる限界を当に越えていたからです。
それでも少女は耐えて、耐えて。
そして。
いつしか少女は。
壊れてしまいました。
そして壊れたまま、いつしか少女は大人になりました。
ですが少女は壊れているので思考も心も満たされません。
そして、大人になってから少女は思ったのです。
誰も『私』を知らない場所で。
『人生』をやり直したいと。
それが、この。
『リメイク』の始まり。
少女は、まだ知りませんでした。
これから起こる。
―――非日常を。
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