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彼の目は光をうつしていなかった。
それどころか彼の目には神谷の姿さえうつっていないようだ。
「なあっ…なあっ!!」
呼びかけても返事はおろかまばたき位でしか体を動かさない。
辛うじて息をしているのはまだ救いだが…
神谷は男をそのまま放っておくことが出来ず呆然としていた。
しかし今は7月。
温暖化などで騒がれている上にその日の日中は33℃を越えていた。
夕方とはいえまだ暑いのだ。
このままでは自分もこの男熱中症になってしまうかもしれない。
「おい、ちょっと来い。ほら立って!」
「…………。」
神谷は何も言わないし動かないこの男を自分の家まで運ぶことにした。
やっと自身の部屋へ男を連れて入った時には神谷の体は汗でびっしょりだった。
依然として動かない細いとはいえ長身な男を体が小さい神谷が背負って来れたのは奇跡と形容してもおかしく無いだろう。
「あっつー……って、本当に大丈夫かよ…」
「………。」
「病院とか連れてくべき?つか熱とか無い??」
そうして神谷の手が男の頭をなでた瞬間
「……………っっ!!?」
男の目は輝きを戻した。
「あ、良かったぁ…そのままどうかなっちゃうかと思ったよ……えと、僕の事わかる?」
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