20人が本棚に入れています
本棚に追加
だから神谷は何も知らないふりをした。
一から……小野の事を何も知らない状態からスタートしようとしたのだ。
「すっ、すみません!!勘違いみたいで…。わざわざ運んで頂きありがとうございます。」
そう、小野が心の奥底でそう言ってもらえるのを望んでいるとわかっていたから。
~~~~~~~~~~~
何度も礼を言い、何かすると言う小野の言葉を丁寧に断り、神谷はその日小野を自宅へ帰した。
少し心配だったが、別にこんな時間だから生徒は居ないはずだ。
神谷は小野にもらったメアドを見つめながらボーっとしていた。
「何、これ……初期設定から変えてないじゃん…」
「いきなりメールはおかしいかな…?」
「とはいえ小野君からメールとか無理そうだし…」
独り言を繰り返す神谷は他人から見れば可笑しい人であろう。
そうしてモヤモヤしているうちに朝日が昇り始めてしまった。
「おわっ、もう朝じゃん!はぁ……何やってんの、僕は。」
自分の気持ち悪さに自己嫌悪しながらすぐに身仕度を整え、学校へ向かう神谷だったが、そこで信じられないものを見た。
「ねぇねぇ君、男?可愛いよねぇ??」
「……………。」
どう見ても小野がナンパされている。
最初のコメントを投稿しよう!