-小説3-<雄福>完

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トントン…… 今日は福田の仕事場に雄二郎が訪れる日だ。 ドアのノック音を聞き、 雄二郎さんかなぁ…? と思いながら福田が、古くて力いっぱい押せばすぐにとれそうな家のドアをあけると… 「福田君、お土産っ」 笑顔の雄二郎と冷たい風が同時に入ってきた。 「うぅっ…寒いっす、雄二郎さん……」 そうだ、今日は朝のニュースで『寒いからマフラーを持って行くのをオススメします!』 とかなんとか言っていた筈だ。 どうせ外に出る予定なんて無かったし対して気にしてはいなかったのだが。 ふと福田が雄二郎の首元を見るとそこには白くて小綺麗なマフラーがまかれていた。 「あのねぇ…俺、今まで寒ぅーい中を此処に来る為に頑張って歩いたんだからねっ!!」 「タクシー使えば良いのに」 「毎回毎回タクシーなんて使ってたらそのうち経費で落ちなくなっちゃうの!」 「ふーん…」 興味なさげな福田に雄二郎は再び何か言おうと思ったが本来の仕事を思い出して止めた。 「原稿、あがった?」 「……うす。」 福田から差し出された原稿を読み… 「今週もちゃんと受け取りました!」 雄二郎は珍しく福田に対して、優しく微笑んだ。
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