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挨拶そこそこで本題に入る沙希。
私も彼女にならい、問いかけられた内容へ答えるため、携帯と一緒に机の上に置いておいたお菓子のレシピ本を取る。
『お手軽なホームパーティ』と題されたそれは、今日、学校帰りに立ち寄った本屋で見つけたもの。
目にした時は本当に良かったって思った。
すぐに私が買ったのは言うまでもありません。
だって今の『私たち』にとってこのレシピ本は、とても必要なものだったから。
ぱらぱらと目的のページをめくる私の手。その手をとあるお菓子の所で止めると、書かれてあることをざっと確認し、私は再び電話越しで沙希と話した。
「うん、下地を作っておけばあとは焼くだけみたいだから、簡単だと思うよ」
《そうなんだ! じゃあ智花に言っておくわ。これでまた一品、メニューが増えたね!》
「何かまるで本当に『喫茶店』みたい! すっごくドキドキしてきちゃった!」
《私も私もー。これなら『東楠祭最優秀模擬店』にも選ばれるかもしれないよ!?》
『東楠祭』。
それは私や楓、沙希が通っている東楠高校で今度行われる文化祭のこと。
私と沙希のクラスはその文化祭で喫茶店をやることになってて、夏の騒動から一転し、今はその準備に追われる日々を送っている。
と言っても、私の場合は所属している演劇部の練習もあるので、まだ学校にいる沙希たちとはちょっと別行動をしちゃってますが。
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