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「あ、秋月。ち、近いってば……」
「『秋月』じゃねーだろ先輩。ちゃんと『楓』って言って?」
慣れない体勢へ顔を真っ赤にさせている私になんのその。
彼――秋月楓(あきづき かえで)は、酷く狼狽えている私へ更に自分の体重を乗せてくる。
どうしてこんなことになったのか。
再びおねだりされた私は支離滅裂になりながらも、一つ年下の恋人へ、恥ずかしくて背けていた視線を戻す。
そこには、女の私が嫉妬するほどきめ細やかな肌に通った鼻筋。整った唇。
少し吊り上がりぎみだけど、これもまた嫉妬しちゃうぐらい長い睫に縁どられた大きな瞳が、吐息と同じように熱を帯びながらあった。
そんじょそこらのモデルやアイドル、俳優以上の美貌。
それが、キラキラと惜しげもなく眩い光を放っている。
ま、まぶし過ぎる。
か、輝きに満ちてる。
どれだけいい顔してるの、あんたは。
ついそう尋ねてしまいそうだったけど、自分にのしかかっている重みと体温ですぐに私はまたパニック状態になった。
チビな私を、スラッと伸びた手足を持つ長身で覆い被さってくる秋月。
そのため長くも短くもない。耳にかかる程度のアッシュカラーに染めた髪が、さらさらと私の方へと流れてくる。
もう心臓がバクバクです。
近すぎるってもんじゃあありません。
完全に密着状態です。
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