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激しく脈打ち始めた私の心臓。
それが相まって、体温も尋常ではないぐらい上がってきてる。
顔は元より、全身から羞恥によって生み出された蒸気が噴出しそうです。
突如として訪れたラブラブな状況に、全くついていけません!
まぁそれというのも、この一連の発端は秋月ではなく、私にあるのですが。
いつ唇が重なってもおかしくないぐらいに迫ってくる秋月を何とか見つめ返しながら、私はこれまでの経緯を思い返す。
確か、ついさっきまで私たちは情報誌を一緒に見ていました。
夏休みはどこかへ遊びに行こうと約束していた私と秋月。
だけど秋月の過去のことで色々あり、それが出来なかったから、改めて二人で情報誌を見ながら決め直していたんです。
私が、次のセリフを言うまでは。
“もう秋にもなるし、紅葉狩りとかいいかも。私、真っ赤に染まった楓が大好きなんだぁ”
えぇ、私にとっては他愛もない一文です。
何も含みを持たせていないし、そのつもりも毛頭ありません。
ただただ秋色に染まった木々の風景に、思いを馳せていただけです。
でも、秋月にとってはそうじゃあなかったみたい。
みるみる赤くなる顔。
私の発した言葉を如実に再現し始めた彼は、文字通り。食いついてきました。
“今、『楓』って言った!?”
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