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幻聴ではないのを確かめるように私の両肩を掴んで、ばっと顔を覗き込んできた秋月。
それに私は額からとめどなく流れてきた汗を感じた。
自分のことだと思ったんですね。
勘違いも甚だしいです。
ていうか、どうしてそう聞こえるの!
あくまでも私が言ったのは植物の『楓』であって、あんたじゃあありません!
彼氏に対してこう言うのもあれだけど、思考回路が唐突過ぎて理解不能。
いつもながらついていけない!
ある意味、私の『楓』発言を直球で受け取った彼はもう、誰も止めることができません。
すぐさま突っ込みをいれたかったけれど、断念せざるを得ませんでしたので。
“せんぱ~い!”
はい、秋月の押してはならないスイッチをオン。
名前を呼んでもらった気になっている彼に飛び掛かられてしまい、そのまま私は押し倒されました。
それで、今に至っています。
「か・え・でって……言って?」
迫られてゆでだこ状態になっている私の顔をつぅーと指先でなぞり。その流れで秋月は私の顎を持ち上げてきた。
恥ずかしくて逃げたいけれど、乗りかかられているのもそうだし、空いてる方の手で頭をがっちり捕えられてしまってもいるから逃れたくても逃れられない。
そんな私に尚、甘い囁きと共にねだる秋月。
「言ってよ、先輩」
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