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ありえないです。
楓が私に課した『本番』がいつの間にか本人にリセットされてしまっていたので、当然のことながら私は慌てふためいた。
「いやぁああ~~~~。か、楓、お願いだから落ち着いてよ」
「え、無理無理。これが落ち着けるか! つーか先輩、また呼んでくれた! やべぇ、嬉し過ぎるっ!」
「どこぞの女子高生みたいなこと言わないで!」
憧れの先輩に名前で呼んでもらえた、きゃっ。
じゃああるまいし!
ていうか言ってみて思ったけど……。あながちそのままですね。
ははっ……ははは……。もう苦笑いしか出来ません。
最終的に。
絡み付いてくる楓から何とか逃れるためずりずりとほふく前進を試みた私は、それでもしがみつくのを一向に止めない彼と格闘するに及んだ。
近くにあったベットへ這い上がろうとしても楓が腰に巻き付いてくるから、彼の頭をぺしぺし。
果てはその端整な顔をぐぐっと容赦なく押しやる。
だけどそんな私の行動を気にも留めてない楓は、「んー」と唇を尖らせて今度はキスのおねだりをしだした。
私がぎょっとしたのは言うまでもありません。
今度はキスしてくれと!?
それはいくら何でも無理!
ただでさえこっちは、名前を呼ぶのにも苦労したんですから!
恥ずかし過ぎる!
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