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「上條さん……」 悲しみを含んだ小さな声。 その声を私は聞こえない振りをする。 しかし悲哀の念が背中からひしひしと伝わり、良心が痛む。 昨日の給湯室での出来事の後から、彼をさり気なく避けていた。 佐藤くんは気づいていなかったけれど。 多分、鳳院さんに会ったことですっかり記憶から抜け落ちてしまったのだろう。 自分がしたことを。 自分がしようとしたことを。 でも、流石に思い出したらしい。 今日の朝から気まずそうに何か言いたげな目をしていた。 私は気づかない振りをしてその視線をやり過ごしている。
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