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しかし、残念ながら彼には何も伝わらなかったようだ。
「昨日は俺、頭に血がのぼっちゃって……」
「あのさ、佐藤くん……」
時と場合を考えて、と言おうと顔を上げると、そこには言葉を失い立ち尽くした状態の佐藤くんがいた。
呆然、という言葉がピッタリの様子で目を見開き、口は最後の言葉「て」の形で固まっている。
「佐藤、くん……?」
突然の硬直にどうしたらいいのか分からず、恐る恐る言葉をかける。
すると、我に返った佐藤くんは表情を一変させ、何も言わずに立ち去っていった。
耳まで顔を赤くして、怒ったような泣きそうな複雑な顔をして。
私は意味が分からず、首を捻ることしか出来なかった。
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