7/17
855人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
「へ~。 あのヘタレがまた随分と思い切ったことを。よっぽど追い詰められてたんだ」 若菜は、夏らしいクリアカラーに彩られた指先でストローをつまみ、ゆっくりと回す。 氷がガラスにぶつかりカラカラと涼しげな音色を奏でた。 「正直、かなりやりにくいんだよね。 仕事があるから話さない訳にはいかないんだけど……なかった事には出来ないし。というか、向こうがさせてくれない」 朝の佐藤くんの態度を思い出し、長々と溜め息をつく。 「ああ。彼は空気読めないからね。『その気ないから必要以上に近寄らないで』て言ったら?」 「いや、はっきり告られた訳じゃないから言いづらくて……」 午後からの業務を考えると一気に憂鬱になり、まだ三分の一残っているサンドイッチに手をつけず、フォークを皿に置いた。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!