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「へ~。
あのヘタレがまた随分と思い切ったことを。よっぽど追い詰められてたんだ」
若菜は、夏らしいクリアカラーに彩られた指先でストローをつまみ、ゆっくりと回す。
氷がガラスにぶつかりカラカラと涼しげな音色を奏でた。
「正直、かなりやりにくいんだよね。
仕事があるから話さない訳にはいかないんだけど……なかった事には出来ないし。というか、向こうがさせてくれない」
朝の佐藤くんの態度を思い出し、長々と溜め息をつく。
「ああ。彼は空気読めないからね。『その気ないから必要以上に近寄らないで』て言ったら?」
「いや、はっきり告られた訳じゃないから言いづらくて……」
午後からの業務を考えると一気に憂鬱になり、まだ三分の一残っているサンドイッチに手をつけず、フォークを皿に置いた。
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