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  「どうしたの? 琴音ちゃんから会いに来るなんて珍しいね」 業務終了後、私は企画部の部屋の前まで来ていた。 鳳院さんは残業なんだろう。 帰る気配は微塵も見えず、デスクの上には資料が広がっていた。 鳳院さんは企画部の人に声をかけ、休憩室へと私を連れていく。 「丁度休憩したいと思ってたんだ。ありがとう、琴音ちゃん」 ふわりと柔らかく微笑まれ、その笑顔に全てを許してしまいそうになる。 駄目だ。 私は文句を言いにきたんだ。 「髪、何で上げてくれないの?」 素知らぬ顔で疑問をぶつけてくるが、その顔には笑みが浮かぶ。 何故下ろしているか分かっているんだ。 「上げてましたよ。 ……昼までは」 「そう、残念。見たかったな」 クスリと笑われ、条件反射で首筋を押さえた。 羞恥のあまり無言で睨み付けると、ますます楽しそうに笑みを零す。
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