理由

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「前にも言ったよね?」 「……え?」 突然投げかけられる言葉。 間近で絡み合う視線。 鋭く強い眼差しに射竦められて視線を逸らすことが出来ない。 「俺は我慢出来ない。 君に、触れたい……」 その言葉と同時に、頭に響くもう一つの声。 『でも、覚えておいてね。俺は……触れたい』 この声は――二度目の食事の後だ。 ぎこちない空気に包まれた無言の帰り道。 月の光に照らされた顔が鮮明に甦る。 夜道に響く鳳院さんの静かな声。 『君の全てが欲しいって、思ってる……』 優しげな眼差し。 でも、その瞳の奥には静かな焔が宿っていた。 そして、今も――――。
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