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どのくらい見つめあっていたのだろう。
恐らく、一分も経っていなかったのだろうが、ひどく長い時間のように感じられた。
鳳院さんの唇が微かに動く。
「キス……したい……」
独り言のような呟き。
少し擦れた聞き取りにくいくらいの小さな声。
だけど、私の耳はその声をしっかりと拾ってしまう。
その言葉が数時間前の熱い記憶を思い起こさせ、胸は甘い悲鳴を上げた。
熱く燃え盛る瞳で見つめられ、焔が燃え移ったかのように全身が火照っていく。
声を出すことが出来ず、無言で鳳院さんの瞳を見つめた。
「――――……っ」
小さく息を呑む音がして、鳳院さんの目が大きく見開かれる。
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