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見間違いかと思うほどの一瞬の後、すぐにいつもの柔らかい笑みが浮かんだ。
弧を描いた唇はそのまま私の額へと近付く。
「あ……」
小さく音を立ててされたキスの後、向けられたのは艶のある微笑。
その笑みに心臓が一際大きく脈打つ。
離れていく鳳院さんの体。
「……ちょっと、悪ふざけが過ぎちゃったね。ごめん。
帰ろうか」
その言葉を聞き、ほっと息をついた。
だけど――。
安堵した筈の気持ちとは裏腹に、何故か私の胸はなお一層締め付けられてしまった。
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