1.紅色の満月

5/9
前へ
/74ページ
次へ
 深夜のショッピング番組みたいなテンションのルカンさんを見てると、何とも言えなくなるのが困るよね?  リランさんはもう撫でるのを止めてるけど、ボクに向かって何度も頭を下げている。うん、とりあえず、ボクは説明を聞き続けることにしよう。 「そして最後はぁ!! 『武具創造』デス! どんな付与効果でも、どんな種類の武具でも作り出すことができたりしますよ!!」  「勿論、消えたりしませんよ!」と言いながらルカンさんが笑顔でボクを見る。うん、凄い能力なのは判ったんだけど……どうしろと? 「ルカン。百合亜さんが困ってますよ。力を与えるのは構いませんが、何故与えるのかを説明しないと」 「……あ、そうだね!」  リランさんが言うと、忘れてたのかルカンさんが反応する。というか、何で能力を先に与えたんだろう。  目の前に浮かんでる杖を持って、ルカンさんがボクの目の前に歩き出す。というか、いつの間に瞬間移動みたいなことやってるの?  そして、ボクの目の前にやってくると、杖を地面にコンコンッと突く。すると、真っ白だった床が世界地図のようなものに変化する。 「百合亜ちゃんにお詫びとして、異世界に転生してもらうことが決定しましたぁ!!」 「……はいぃぃぃぃぃぃ!?」 「え、いや、だから、異世界に転生を――」 「ルカン、結果だけを言おうとしないの。詳しく説明しなさい」  ボクが少しだけパニックになってると、同じく何故かパニックになっていたルカンさんが、リランさんに頭を叩かれていた。  それにしても、異世界転生だなんて……携帯小説にありがちな展開なんですね。  ボクが考えながらルカンさんを見ていると、リランさんに叩かれまくっているルカンさんが、突然杖をボクに向けて、突く。 「ちょ、なんでボクに突くんですか!?」  しかし、ボクの言葉が聞こえなかったのか、真剣な目をしたルカンさんの突きは止まらなかった。止めてもらえなかったのほうが、正しいのかもしれないけど。  リランさんも慌てながらルカンさんを止めようとしているけど、正直さっきまでのルカンさんの動きではないため、難しいようだ。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

349人が本棚に入れています
本棚に追加