1.紅色の満月

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「ルカン、いきなりどうしたのですか? というか、何で説明したくないんですか? え、馬鹿なんですか? 馬鹿なんでしょう? 止めなさい!!」 「馬鹿馬鹿言うなぁーー! 一応、世界の知識を与えようと百合亜ちゃんを突こうとしてただけなんだから!!」  ……や、何でボクを突く必要があるんだろうか……。  とりあえず、避けきれないので一応当たっておく。うん。ドガァァって音が鳴ってるね。あ、ボクが少しだけ押された音かぁー……。 「――痛い……」 「あわわわ……! ゆ、百合亜ちゃんごめんなさい!!」 「とりあえず、ルカン。貴女は土下座でもしなさい。出来ないなら私が手伝ってあげても良いのよ?」  ボクの一言でなんだかややこしくなった気もしますが……まぁ、気にしないでおきましょう。そこそこの知識も頭に入ったことですしね……。  とりあえず、世界については……名前だけ調べてみる。と、言っても思い出すだけで良いそうだ。便利すぎる。  ほうほう……ボクが行く世界は『アーティア』と呼ばれる世界みたいだね。四種族が居て、そこそこのバランスを保ちながら共存してるのか。  でも、黒い話などは何処にでもあるもの。共存とはいえ、世界なのだから種族関係無しに戦いとかもあったんだね。  っていうか、名前だけ調べるはずだったのに濁流の如く溢れ出る知識。怖いんだけど。 「ふーん……ボクは一応何歳ってことでアーティアに行くのかな? そのままの姿で? それとも、赤ちゃんからかな?」  ボクの独り言を聞いていたルカンさんは、土下座の格好をしながらもボクに向かって叫ぶように言う。 「え、えーっと! 一応そのままの姿で行ってもらうよ!! 百合亜ちゃんの今の姿が気に入ってるからね、赤ん坊からなんてやらせません!!」  ルカンさんが少し興奮しながらボクに向かって言ってきたので、リランさんに目線だけ合わせる。数秒後、リランさんは笑顔でルカンさんの背中に足を置いて説教を始めた。  しかし。ルカンさんは、今のボクの姿が気に入ってるそうだけど……。正直お世辞にも、ボクは綺麗とは思わない。  前の世界で可愛いは言われたことはあったけど……。何か、年下からも可愛いって言われてたような記憶があるんだけど……。
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