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「それであの……話ってなんですか?」
このままだと話が進まないような気がしたので僕自身が話の流れを作った。するとようやく流れに沿って坂之上さんが話を戻してくれた。
「話が拗れていたね。なら順を追って話していこうか。君は覚えていないかもしれないが、実は私と優介君とは面識があるんだ」
「……それってどういうことですか?」
意味が全く分からない。何を言っているんだこの人は。
「私は、君のお父さんと親友の立場にいた」
驚愕。
「そ、そう……なんですか」
落ち着け僕。言葉を上手く口に出来ない。
「君のお父さんは素晴らしい人だった。優しくて、純粋で、性格も良かった。いつも彼の周りには人がいたよ。……そしてなにより強かった」
僕の知らない父さんの部分をこの人は知っている。いつの間にか坂之上さんに対する警戒は解いて話に耳を傾けていたことに僕は気付いていなかった。
思い出を噛みしめるように坂之上さんは一つ一つ語る。どれも父さんを褒め称えることばっかりで息子の僕も鼻が高い。
「彼が死んだと聞いた時、私は質の悪い冗談かと思ったよ。それほど私も、彼の死を受け入れたくなかった」
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