そして僕は決意する……多分

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 本当に悲しそうな顔をしている。それにうっすらと目元に涙が浮かんでいる気がした。 「多くの人が彼の死を嘆いた。そうだ、覚えてないかな?私と君は葬式で会ったんだが……その様子だと分からないみたいだね。無理もない、あの時の君はかなり取り乱していた」  そういえば葬式には沢山の人が来てくれていた。近所の人は勿論、知らない人も。知らない人の大半は母さんや父さんの知り合いだったんだろう。  その中に坂之上さんがいたとしても幼かった僕が覚える余裕などない。それに坂之上さんの言う通り葬式ではかなり泣きじゃくっていたから尚更。 「彼の死は大きい問題ともなった。彼の、優一(ゆういち)の後を継ぐ者がまだ現れていない。これは由々しき事態だ」  今日初めて坂之上さんは父さんの名前を出した。福野優一、今は亡きたった一人の父さんの名前。久しぶりに聞いた父さんの名前はやっぱり懐かしく感じる。  そして父さんの後を継ぐ者がいない。僕はその意味を分かっている。 「四聖剣の中で最強であり長(おさ)でもあった優一。未だその席は空白のまま。優介君、私は息子の君に後を継いでほしいと思っている」
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