そして僕は決意する……多分

29/54
前へ
/180ページ
次へ
「おっと、待ってくれ。部屋に入る前に一度そこの階段を上がってくれ」  どうしてかは聞く必要はないだろう。面倒だし。そんなことより階段は……あったあった。前方にあった扉から死角となる位置に上へと繋がる階段があった。  普段学校で使っている階段よりも綺麗に整備されていて角度も緩やかだけどなんだか上までの道のりが長い気がする。実際に長いのは間違いない。それほど上へと向かっているのだろう。スペースを稼ぐために螺旋状となっている階段を登り終えて広い空間へ出た。  これからどこへ向かえばいいのか悩んでいると遅れて階段を上がってきた坂之上さんが助言をくれた。 「階段を上がってすぐ右側の壁に地図が貼ってあるだろう。それを見て十番と書かれた部屋に辿り着くように道筋を辿っていけばいい」  感謝の意を伝えないまま言われた通りに壁へ近寄る。ふむふむ、なるほどなるほど。……うん、わからん。ていうか下にあった扉の先が十番かと思いきや、扉を抜けた後からも道があったのかよ。  地図とにらめっこしている僕に対して坂之上さんは、ただ一言「ついてきてくれ」と言った。この時ばかりは自分のことが情けないと思った。  大して時間が掛からない内に目的の場所には着いた。 「優介君、入ってくれ。この部屋は所謂観戦部屋みたいなもので、今娘が使っている十番の部屋を見ることができる。」  
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24287人が本棚に入れています
本棚に追加