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「……どちらさまでしたっけ?」
ははは、思いっきり忘れられているじゃないですかー。本当に話していたのか?
「一週間前にも前以て伝えたじゃないか。“あの”福野優介君だよ」
“あの”?一体どういう風に僕は話されているんだ?気になる。
「あ!!もしかしてお父様が私より強いと言っていた福野優介!!」
坂之上さん、どうしてそんなことを言ったんですか。
坂之上優衣の育ちの良さが出ているのは言葉遣いだけではない(少々イラつきはするが)。座り込んでいる姿勢や一つ一つの仕草が可憐で可愛らしい。長い三つ編みを後ろで一つに括っていて、髪も一本一本綺麗で上品さが感じられる。そして訓練によって汗をかいている姿はなんというか……扇情的というか……まぁ、エロい。
当然そんなことを親の目の前で言うつもりはない。その前に本人に言うつもりはない。流石にこれは言ってはならないということぐらい分かっているつもりだ。空気が読める男なんだよ、僕は。
穴が開きそうなほど睨んでくるがこれも無視をした方がいいだろう。精一杯顔を逸らして視線から逃れる。面倒なことになりそうだし間違っても目を合わせたりしたくない。
「あーまぁ、なんというか……初めまして?」
坂之上さんから聞いた話が本当だとすると、僕と優衣は初対面ではないことになる。しかし肝心の優衣との面識の記憶はない。したがって疑問形を付けた挨拶をしたわけだが、どうやら正解ではなかったみたいだ。
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