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今更どうしようもない。出来ることと言えば全力疾走をして少しでも早く観察部屋へ辿り着くことだ。うわぁぁぁぁぁぁん、怖いよぉおおおおおお。
飛び込むようにして観戦部屋に入り込む。受け身を失敗して至る所に痛みが走ったが今は恐怖が勝っている。余裕で気にしなかった。
休憩用の為かこの部屋にはベッドが備えられている。そうした設備まで充実していることに驚きもあるけど今は助かった。
毛布に包まってひたすら時間が過ぎるのを待つ。毛布の温もりが今がとてもありがたかった。
ベッドは本来休む為の道具である。横になっていると段々眠気が催してきた。しかし今から寝るといってもあまり時間がない。ここは我慢して起きていることにしよう。
†
「遅いですわ!!」
「いや、その……面目ない……」
決して空気を読んでいたわけでないがあの後やはり寝てしまった。内心寝てしまうような気がしていたんだよな。
睡眠時間は一時間と少し超えていて、遅いと思った坂之上さんが観察部屋に訪ねて来なかったら今も僕は寝ていただろう。
『優衣だって慌ててさっき来たばかりだろう?遅れてしまうとか言いながら焦っていたじゃないか』
この場にいないはずの坂之上さんの声がする。その正体は決して幽霊ではなく、音の出所はどこかにあるスピーカーからだ。
優衣は坂之上さんに聞こえるように、顔を真っ赤にさせて「それは言わないで下さい」と言っている。まぁ、僕に注意しておきながら自分も危なかったから恥ずかしかったんだろうね。
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