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「坂之上さん、さっき言った約束は忘れないでくださいね」
この場合の約束とは、坂之上さんの私室で行ったものではない。坂之上さんが一人で観察部屋に向かう際、新たに僕が坂之上さんに頼んだ。
ここまで来て僕が戦いを拒否するかもしれないという可能性を考えたのか、悩みながらも了承してくれた。その内容とは単純にして明快。
『ああ、分かっているよ。優衣との戦いを記録として残さない。そして実際に観戦するのも私だけ。そこまで目撃者を減らしたい理由は分からないがこの場は納得することにしておくよ』
確実に守ってくれる保障ないけど、今は信じるしかない。
『二人とも準備はいいかい?開始の合図は私が出す。武器の復元も合図を出してからだ』
優衣とある程度の距離をとって対峙する。横腰辺りにある剣帯、後ろ腰に銃を収めているホルスターのどちらでも武器を引き抜けるよう手を近づける。
『カウントはしない。いきなりブザーを鳴らすからそれを合図としてくれ』
大きく息を吸ってゆっくりと吐く。目を閉じて耳に意識を傾ける。膝を軽く曲げ、いつでも動けるような状態へしていく。さぁ、いつでもこい。
「………………」
音が鳴った。思ったより小さく、短い音だった。本当に開始の合図か疑ってしまったが、自然と体があの音を合図と決めてしまった。括目し、四つある武器の内二つを手に取り、起動言語を口にした。
そしてそれは正解だったらしく、優衣も起動言語を唱えていた。
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