そして僕は決意する……多分

43/54

24287人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
 僕は後ろを向いたまま下がる。対する優衣は普通に前を向いたまま走る。どちらが速いのかは火を見るより明らか。  後一、二歩進められたら優衣の攻撃範囲内に入ってしまう。ああもう、どうしようかな。……うん、そうだ。一旦銃を使うのを止めよう。  右手に持っていた拳銃を宙へ放り投げる。この奇行に優衣は一瞬だけ視線を拳銃へ向けた。だが肝心の迫る速さは一向に変わらない。そして空いた右手で剣帯から武器を引き抜く。 「復元」  言葉を発した時には細剣の突きが繰り出されていた。それにしても、剣を細くする意味を僕は理解できない。刀身に重さが存在しないのはもはや常識。  空間を埋めるように放たれた突きのラッシュ。あまりの手数に、突きで一種の壁を形成させた。しかし、いくら多く見せようとも実際に存在するのは一つのみ。    柄から刀身が発生し始めた。その速さはかなりの高速。本来ならばその速さに不満が出ることはないが、この場合では少々危ない。  切っ先は既に目と鼻の先だ。三分の一程まで伸びた刀身で攻撃を逸らす。今度は半分にまで伸びた状態で流す。そして完全に復元された光剣で、優衣の細剣を弾いた。  背筋に冷や汗が流れる。  弾いた際に、僅かに優衣の体がブレた隙を見逃さず、反撃を喰らわせんと袈裟切りを行った。豪快さを求めたその一撃は、切ることよりも力付くで吹き飛ばすことを目的としていた。  
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24287人が本棚に入れています
本棚に追加