そして僕は決意する……多分

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 ×(バツ)を描くように優衣に斬線を刻む。苦悶に満ちた表情を浮かべる優衣だが、声を上げないように耐えている。いや、声を出す余裕すらないということか。  設定で切れないようになっているから優衣の体から血が出てくることはないが、鋭い鈍器で殴られた衝撃は相当なものだろう。  僕が後ろに回り込んでからの攻撃をした為、飛ばされて出来ていた優衣の慣性が死んだ。むしろ僕の攻撃が強さで上回り、飛ばされてきた方向へ逆戻りされる。  今度は宙に浮いたまま飛ばされることはなかった。しかし優衣の体はなすがままの状態で床を転がっていく。これで終わってくれると僕としても助かんだが……  最初は体を打ち付けながら転がっていたけど、十メートル程転がると四つん這いになって摩擦を起こし、速さを緩くし始めた。やっぱり終わってくれないか。  坂之上さんがこれ以上は無理だと判断すれば止めてくれるんだが、生憎そうなることはなかった。娘の体を心配するなら試合中止、娘の気持ちを優先するなら試合はまだ続く。  きっと坂之上さんなら後者を選択する。  だから多少気は緩めながらも視線だけは優衣から外すことはしない。  四つん這いのまま滑っていたがその速度は徐々に遅くなり、遂にはその動きが止める。やはりダメージが残っているのか遠くから見ても疲労していることが分かった。  試合が続いている以上、相手が疲れている姿を見てただ見物するわけにもいかない。もう一丁残っている拳銃をホルスターから抜き取り、照準を優衣に定める。  そうしてゆっくりと引き金を引いた。    
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