悪の組織 強襲 危機一髪

2/38

24287人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
 ゆっくりと息を吐いて後ろを振り返る。そこに映っていたのはうつ伏せに倒れた優衣の姿があった。刀身は切れないようになっているので決して殺してはいない。  現に、今も肩を動いてることが分かるから呼吸している。 『今からそこに向かうから少し待っていてくれ』  伝え終わるとスピーカーの電源を切られた。恐らくあの観察部屋からこの訓練室へ向かってきているのだろう。二人しかいないこの状況で、内一人は気絶で話せる体調ではない。唯一話せる僕も、独り言を言うほど変人ではない。  静寂がこの部屋を支配する。 「流石だね、優衣」  これは独り言ではない。あくまで気絶している優衣に問いかけているだけだ。しかし返事がもらえないと分かっている以上、やはり独り言になってしまうのかもしれない。 「最後の一撃、当たるとは思ってなかったよ」  そう、優衣が放った一撃は僕の元へ届いていた。彼女の気力が力を生み出し、僕の想定以上の速さで動いていた。  服装の腹部部分には切れ込みが入っていて、見てないけどきっと痣が出来ている。戦闘服ではなく学生服で戦った所為だな。切れ味の設定を弄ったとしても、その鋭さには変わりはないので人は切れずとも物ぐらいなら切れる。  平気を装っているけど、実は今もかなり痛い。それが気休めと分かっていても腹部に手を当てて回復を図る。一撃でも喰らうつもりはなかったけどそんなに甘くなかったな。    
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24287人が本棚に入れています
本棚に追加