24287人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
公園の入口からとぼとぼと元気のない一人の子供がやって来る。
遠目からだったがすぐに誰か分かった。
あれは『僕』だ。
自分で元気がないというのはどうだろうと思うが、実際あれを見るとそうなのだから仕方ない。
多分これは僕の記憶を再生でもしているのだろう。
この公園といい僕の姿といい見覚えがある。
これから何があるのかも鮮明に覚えている。
僕の記憶が正しければあの『僕』は、十歳か十一歳そこらな筈。
その年の時に何が起きたのか、それは父さんと母さんが死んだ年だ。
この時既に『僕』は親戚の家で生活していた。
優しくしてくれてはいたが小さい時に両親が死んだショックは大きく、それこそ生気のない顔だったと思う。
その証拠に公園に入ってきた幼い『僕』の顔は、なんというか無表情の人形を浮かばせた。
幼い『僕』は公園に入るなりブランコに座り込む。
しかし漕ぐことはなかった。
ただ茫然とした表情で空を見つめていた。
今だからこそとは思うが、その動作の裏には両親は天国へ行ったと聞き、寂しさのあまり天国にいる両親の元へ行きたかったのかもしれない。
それが空を見つめていた原因。
最初のコメントを投稿しよう!