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それでも声には驚きが混ざっている気がする。戦う姿勢は無くならないがやはり柄が壊されたのは内心穏やかではないだろう。
小さくなった大剣は最早大剣ではなく長剣が相応しい。だけどそれにはあまり気にする要素を見せない。あまり武器に思い入れがないのだろうか。
武器のことは脳の片隅に置いているようで僕のことを捉えて離さない。まるでどうやって攻撃しようか考えているようだ。
考えつくまで待ってあげることが強者のマナー。勿論嘘だが。
その場から残像を見せずに彼女の元へ迫る。空気の揺らぎすら発生しなかった高速移動。
彼女は目の前にいきなり現れた僕に声を詰まらせて驚く。それを好機と見た僕は彼女腕を取り、肩を軸にして地面へ投げ付ける。端から見れば柔道の投げに見えたかもしれない。
肺から息を漏らして苦しそうに呻いている。そうすると手の力が緩んで剣を持つ力も弱まる。
剣の腹を足で蹴るといとも簡単に彼女の手から離れた。剣は回転しながら床を滑っていき、やがて運動エネルギーが無くなり動きを止める。静止してからしばらくすると武器は自動で刃を納めた。
仰向けに倒れている彼女の喉元へ剣先を持っていく。
「降参しろ。これ以上は無駄だ」
そしてなにより面倒くさい。
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