僕は友達が少……多い方だ

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「そう急ぐな。俺がまだ食べ終わっていないしなにより話も終わっていない」  賭けは僕の勝利。桐原の様子から見るに先程していた会話の続きではないようだが、新しいことについて話してくれるんだろう。  それにしても気前がいいな。もしかして本当に酒でも飲んでいるわけではないだろうな。それは勿論杞憂であって実際には飲んでいない。 「お前、どうして悪の組織に入った?」  予想外の質問に僕の動きが一瞬止まる。だけどそれはあくまで一瞬であり誰にも悟られていない。  桐原からしてみれば何気ない一言だったのかもしれない。だけど僕にとって悪の組織に入った理由はとてつもなく意味のあるもの。動きを止めるのに十分だった。  無意識にある一人の女の子が頭の中をよぎった。 「嫌なら言わなくてもいいぜ。無理して答えるものでもないしな」  もしかして僕が答えなかった理由を知っているのか。いや、それは絶対にない。  口調だけだと変わりはないが桐原の表情は真剣なものへと変わっていることに気付いた。つまりあの質問はふざけて言ったわけではないのか。 「今から話す内容は他言無用。まぁ、聞けばお前らは他人に話す気を無くすと思うがな」  そう言う桐原に、やはりふざけている様子は見られなかった。
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