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「俺が悪の組織に入ったのは……」
僕が答えれなかった質問を桐原は自ら答えようとする。だがまるで、喉まできているものの口には出せない、そんな感じだった。
桐原の目には哀しみが宿っていた。そしてそこには怒りも隠されてあることに僕は気付いた。
もしかしたらさっきの僕もこんな風に似ていたのかもしれない。隠しきれていない感情はすぐに見抜かれ、他人にも容易に伝わる。
僕はてっきり誤魔化しきれていたと思ったが違っていた。桐原は最初から分かっていたんだ。悪の組織に入った理由が言いづらい内容だということに。
もしそうならば桐原も同じように言いたくないはず。それならば桐原だけに答えさせたくない。
「言わなくてもいい。大体分かる」
桐原は小さく笑う。端から見るとそれは、自分自身に対して嘲笑っていた。自分から話し出そうとしておきながら言わなくてもいいと言われたことに安堵した自分。そんな自分を嘲笑っているのだ。
「すまねーな」
だが少しだけハッキリしたことがある。僕が悪の組織に入った理由は早々人に言えるものではない。実際には言いたくないだけだが……。つまり悪の組織に入っている人達は皆、何かしらの秘密を抱えてそれが原因となって所属している。
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