僕は友達が少……多い方だ

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「これからどうする気だ?帰るか?」 「折角久し振りに会ったんだ。もう少し話していこう」  重苦しい空気を取り払うように話の内容を変えた。今まで体験してきたことや面白い話を三人で出し合って笑い、感動し、驚いたりしていると目的である時間を潰すことを達成した。  その甲斐あって話もかなり盛り上がった。僕も楽しかった。真弥と桐原は今日が初対面なのにそれを感じさせないほど仲が良くなっている。  そして桐原は良い奴なんだなぁと考えを改めることにした。ただの苛つく奴かと思ったが違っていた。だからといって今更敬語にしようと思わないが。  そんなことを考えながら今自宅へ続く帰路を通っている。大分冬に近付いたこの頃、日が落ちるのも早い。呼吸をする度に出てくる白い息は寒さを示す象徴。  運が悪いことに僕は手が暖まる手袋を持っていないし首元に巻いて体温を逃さないマフラーも持っていない。防寒具らしい防寒具を持っていない状態で寒さに立ち向かう。  自然が織り成す猛攻に当然敵うわけもなく身を丸めて堪え忍ぶことしか出来ない。ああもう、寒い。  我が家の一部が見えた時には内心喜んだ。早く暖まりたい一心で自宅へ駆け寄る。風を切るように走ると冷え込んだ冷気はより一層冷たく感じる。  それでも止める気にはなれなかった。一時的に我慢すればその分早く辿り着けるからだ。
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