---華、散る---

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「男どもが馬鹿みたいに、力を見せ付け合い、争いを起こし、あまつさえ戦争まで始め、それでも人がいなくならないのは、女がいるからだって、忘れるな。 性欲の捌け口にして、支配しようとし、死ぬ思いで子を産む女を道具の様に扱う。巫山戯んな。女から産まれたのに、何故女を卑下する?何故女は男より前に出てはいけない?全てが男のために作られることを、おかしいと思ったことはないのか。 その、手も足も指も口も目も耳も頭も髪も鼻も心臓も、全て、男が出したモノを女が受け取り、産んでくれたからあるものなんだ。そして、今のあんたたち男を、後世に伝えてくれるのも、女がいるからだ。 それなのに、何故男が女を大切にするのはわかるにせよ、見下し道具の様に扱うことが許されるのか」 それは、この時代には余りない考え方だった。だが、その言葉は、凝りに固まった考え方に、少しずつ溶け込んだ。雪斗にとっては、それが普通の考え方。男の全てを否定するわけではないが、全てを認めることも出来はしない。 「許されると思っているなら、それは大きな誤り。自分勝手もいいとこだ。男も女も、生きているんだよ。ついてるかついていないか。役割が違うだけ。そして、絶対に使ってはいけないものがある。男は、暴力で女を手に入れようとしてはいけない。それは男としてやっていいことじゃない。綺麗事並べるわけじゃない。けど、最低限守るべきことだ。 鉄君が、認められないのはわかっている。だって、俺と鉄君では、目指しているものも、答えも、何一つとして同じものはないから。違うんだから。自分とは違うものを受け入れるのは、とても難しいことだから」 だから、いい。と、雪斗はそう締めくくり、市村の頭をくしゃくしゃと撫で、他の全員に見向きもせず、道場を出て行った。 誰もが身動き一つとれない中、総司は雪斗を追い、同じように道場を出て行った。 総司は、雪斗がいる場所はもうわかっていた。草鞋を履き庭に降りて、向かったのはこの屯所の一番奥にあり、殆ど人気のない所にある小さな桜の木の下。茂みを掻き分けると、 「みーつけた」 「…総司さん」 小さく座っていた雪斗は、抱えた膝の間に埋めていた顔を上げた。 .
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