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「大丈夫。ちゃんと伝わっていますよ」
その言葉に、涙が溢れた。本当は、先程の言葉の全てを受け入れてくれるなど思っていない。逆に、反感を買ったかもしれない。でも、あれは全て雪斗の本音で、変わることはないのだと思う。
「…っそ、ですかね…言わない、ほうがっ…よか、良かったかもしれない…」
「そんなことありませんよ。むしろ、滅多に聞くことの出来ない、あなたの本音が聞けて嬉しいですよ」
よしよしと頭を撫でてやると、雪斗は総司の腰に手を回し、臍当たりに頭を押し付けた。
逃げるように、出て来てしまった。言い逃げしたのだ。周りの反応が怖くて。拒絶されたくなくて、そんな目で見られたくないから。
「…でも、取り消しは、しません」
「えぇ。しなくていいと思いますよ」
べそをかきながら、雪斗は総司を見上げた。こんな風に、やけになって泣く雪斗は珍しい。こういう時は、気が済むまで泣かせてやるのが一番だ。
「総司さん、も…呆れました、か?あんな、一方的に、男性を…詰って…」
「確かに、余りない考えですね。でも、それは、私たち男では絶対気づかない女人の視点でしょう?あなたは、私たちに、もう半分の世界…大袈裟かもしれないですけど、それを教えようとしてくれたんじゃないですか?」
宥めるように髪を梳いてやると、雪斗は再び顔を埋めた。日が暮れて少し肌寒いが、雪斗湯たんぽがあるので何とかなっている。桜の蕾も膨らみ、あと少しで咲くだろう。
「…も、もっと…女性を、大切にしてほしいと、思っています…女と男は…どちらが欠けても生きていくことは、出来ない、から…だから…」
「よく考えればそうですよねぇ…女の人って、よく我慢していますね…そう考えると、今の世の中、女の人にとってかなり生き辛いんでしょうね」
むぎゅっと抱き付いたまま、雪斗は無言で頷いた。どんな言葉でも、総司は一番最初に雪斗が一番言いたいことを掴んでくれる。だから、雪斗もブレることなく話すことが出来る。
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